集団をどうマネジメントするかという課題ですが、まず集団とは、どのように定義されるのでしょうか?
集団とは、ある特定の目的を達成するために形成された複数の個人の集まりのことです。したがって、組織目標のもとに集まっている企業は、大きな集団と言えます。もちろん、特定の業務を遂行するという目的のもとに組織された職場内の部署も集団です。
集団のマネジメントを行う際に起きがちな問題には、例えば以下のような問題があります。
- コミュニケションの問題
- コンフリクトすなわち対立の問題
- 集団の意思決定の問題
物事を成し遂げようとして集団で働く時には、一対一の関係性以上に様々な問題が持ち上がってくるものです。まずはその一つであるコミュニケションの落とし穴について考えてみましょう。
コミュニケーションの落とし穴
コミュニケションの落とし穴を生む要因は、メッセージの『送り手』『受け手』の双方に存在します。
まず送り手側には、フィルタリングという要因があります。これは受け手に、より好意的に受け入れてもらうために、
送り手が情報を操作してしまうことです。
相手にとって耳の痛い話を伝えないという場合が、これに該当します。
受け手の側には、選択的認知という要因があります。これは複数の情報から、特定の情報のみを選択したり、自分の関心や期待を反映させた解釈を行うことを指しています。相手の話を聞きたいことだけ聞く、好きなように解釈するといったことがその例です。
これらは意識的に行われるだけでなく、無意識のうちに行なわれることもあるので、注意が必要です。
メッセージの送り手、受け手双方に共通する要因として、文化的差異があります。これは文化的なバックグラウンドが違うと、同じ言葉やジェスチャを用いても受け止め方が異なるということを指します。この場合の文化は、国籍や年齢性別、職場での階層や経歴など、様々な違いによって生じます。
この違いを知らないと、『いいね』と伝えたつもりが、『駄目だね』と伝わることもあるので、注意が必要です。
このようにメッセージの送り手、受け手の双方にコミュニケションを阻害する要因があることを、理解しておく必要があります。
集団は、集団を構成するメンバー相互のコミュニケーションがなくては機能しません。効果的なコミュニケーションを行うためには、お互いの認識が一致しているか、確認を怠らないことが大切です。
そのためには、話のポイントを繰り返したり、言い換えたりすることによって、コミュニケションを行なう相手に対して、このように伝わっているよということを億劫がらずにフィードバックし合うのも、一つの方法です。
コンフリクトのマネジメント
集団で起きてくる別の問題として、コンフリクトすなわち対立があります。コンフリクトとは、相反する態度、要求などが存在し、互いに譲らずに緊張状態が生じることを指します。
このようなコンフリクトを、どのようにマネジメントしていけばよいでしょうか?コンフリクトへの対処を行うにあたっては、まずは状況の分析を行います。
最初に行うのは、コンフリクトが個人組織を及ぼすプラスマイナスの効果の分析です。コンフリクトにはプラスの効果もあり、時としてプラスの効果が、マイナスの効果を上回る場合も考えられます。
例えば、他部署から来たメンバーが、これまでの営業活動の進め方を、変革するようなアイデアを提案している故のコンフリクトであれば、プラスの効果が大きいこともあり得ます。
次に、コンフリクトがどのようなきっかけで発生し、どのように深まったかというパターンを掴むことで、解決策の糸口を探ります。
そして、コンフリクトの性質が、事業運営上の意見の食い違い=実質的問題から生じるものなのか、それとも個人的な認識や感情による問題なのかの見極めを行います。
さらに、根底にあるのが外部要因=時間や予算、人員の制約、業績へのプレッシャーなどなのか、それともメンバの相性や対抗意識など、個人的要因に起因するものなのかを探ります。
通常コンフリクトは、外部要因と個人的要因とが絡み合って起きることが多いと言えます。このようなコンフリクトの構造を理解した上で、交渉する、制御するなどといったコンフリクトの対処を選ぶことが求められます。
コンフリクト=対立は、組織においては避けられないものであり、構造を把握して、適切な対処を行うことが必要です。
集団による意思決定の罠
集団において起きがちな別の問題として、集団による意思決定の罠があります。
三人寄れば文殊の知恵というように、一般に集団での意思決定は、人々の様々な知恵や意見を取り込むことにより、個人での意思決定よりも優れているとされますが、集団で意思決定を行なう際に陥りやすい罠には注意が必要です。
認知バイアス
人間が持つ考え方の癖は、認知バイアスと呼ばれます。認知バイアスには様々なものがあり、様々な場面で現われます。そして、認知バイアスは個人ばかりではなく集団においても当てはまります。
認知バイアスのうち、代表的なものの一つとして、個人では考え付かないようなことも、集団で意思決定した途端に過激になってしまう集団思考と呼ばれるものがあります。
また、その他に代表的な認知バイアスの例として、意見の統一を急ごうとして、様々な角度からの議論を十分に行なわずに結論を出してしまう集団浅慮があります。集団浅慮はグループシンクとも呼ばれます。
認知バイアスを避けるためには
では、実務の場において、認知バイアスを避けるには、どうしたらよいのでしょうか。
まず、認知バイアスが存在するということを自覚し、そのメカニズムを知ることが大切です。メカニズムを知っていれば、対処法を検討することができるからです。会議の場で、一言こういう傾向があるから注意しようと指摘したり、あえて反対意見を述べる方法を取るといった方法もあります。また、意思決定ルールを明文化して、認知バイアスを回避するというのも一つの方法です。
このように集団で意思決定を行なう際に陥りやすい罠が存在します。認知バイアスを完全に避けることは困難なので、あらかじめルールを定め、それに従って行動するというのも一案です。
集団のマネジメントの課題と解決策のまとめ
集団のマネジメントにおいては避けることができない課題の代表例として、『コミュニケション』『コンフリクト』『集団における意思決定』があります。
まず、集団の中で起きがちな問題として、コミュニケションの落とし穴を取り上げました。コミュニケーションにおいては、送り手受け手の双方にコミュニケーションを阻害する要因があります。具体的には、メッセージの送り手側のフィルタリング、受け手側の選択的認知、そして双方の文化的差異などです。集団内でのコミュニケーションを効果的に進めるためには、このようなコミュニケーションを阻害する要因があることを、理解しておく必要があります。
また、集団において起きがちな問題の二点目として、コンフリクトを取り上げました。コンフリクトは、組織においては避けられないものであり、コンフリクトの状況を分析して、構造を理解し、適切な対処を行う必要があります。
そして、集団での意思決定においては、集団思考や集団浅慮などといった認知バイアスが起きがちです。このような認知バイアスを避けるためには、認知バイアスの存在とメカニズムを知った上で、避けるための方策を用いる必要があります。
今回解説した集団のマネジメントの諸課題は、おそらく皆さんも日常的に経験する機会があるものばかりではないでしょうか。毎日の業務の中でこれらの解決策をぜひ活用してみてください。