近年話題になっている新しい組織のあり方がティール組織です。
ティール組織とは、
- 固定化されたミーティングや組織内の上下関係がほとんどない
- セルフマネジメントの組織とも言われ、メンバーがそれぞれ違った価値を発揮することから、自然界や生命体に例えられる
- 売上利益重視の組織に魅力を感じないミレニアル世代に特に注目されているなどの特徴があります。
実はこれまでも、組織は時代に合わせて変化してきています。
組織の形態が、どのように変化してきたのかを交えながら、ティール組織について解説していきます。
レッド組織(衝動型組織)
まず、初めに現れた組織形態がレッド組織です。レッド組織は規模が小さく支配的な集団です。
トップは自らの地位を守るために暴力と恐怖心によって、組織をコントロールしています。
隙を見せると他の誰かに地位を奪われてしまいます。例えて言うと、マフィアやギャングなどの組織です。
個人の集まりから進化し、レッド組織ができたことによって、トップダウンの権力構造とトップとトップ以外という仕事の分業体制が生まれました。
しかし、正式な階層も役職もないため、組織の大きさには限界がありました。
トップはすぐに成果を出すことに関心がある一方、成果を出すためのプロセスには関心がありません。
そのため、意図して同じような成果を生み出しにくいという弱点があります。
アンバー組織(順応型組織)
次に現れたのはアンバー組織です。アンバーとは琥珀色を意味します。
アンバー組織は、不変の法則やある一定のルールに基づいた役割主義的な組織です。組織はルールと権威によって、コントロールされています。
例えて言うと、中世カトリックの組織や軍隊、国家機関などです。組織に正式な役職、固定的な階層、構造ができたことで大きな組織運営が可能となり、また権力が安定するようになりました。
そして、知識や経験を組織として取り入れ、プロセス化したことで、長期的な視点で将来の予測や計画を立てることが可能となりました。
そのため、レッド組織と異なり、過去の経験を未来にも再現できるようになったのです。
ピラミッドや万里の長城などの大規模な建築物は、このアンバー組織である国家によって達成されたといわれます。
アンバー組織では決まったルールのもと、組織メンバーの役割は固定化されます。自分の役割がはっきりすることで、組織への所属意識は高まります。
一方で、個人的な感情や適性よりも、組織の役割に応えることの方が、重要視される一面もあります。
オレンジ組織(達成型組織)
次に現れたのは、利益を求め合理性を追求するオレンジ組織です。
組織は大きな機械とみなされます。人間は歯車のように扱われ、リーダーが作った設計図通りに物事が進むことが重要となります。
利益を追求し、拡大し続けるグローバル企業がイメージしやすいでしょう。
オレンジ組織がもたらした特徴は三つあります。
- 競争相手に勝ち利益を最大限に獲得するためのイノベーション
- 組織のメンバを統制するための目標管理やボーナス制度など科学的なマネジメントの仕組み
- 結果を出せば誰もが組織の階段を上り権利を持てる実力主義
オレンジ組織によって自由と繁栄が生まれましたが、一方で利益を追求しすぎた結果、地球環境へ悪影響をもたらしたり、人生の成功基準がお金と名誉に限定されてしまうといった歪みなど、負の側面をもたらしたのも事実です。
グリーン組織(多元型組織)
オレンジ組織の反動から生まれてきた次の組織形態が、グリーン組織です
グリーン組織は、人間の感情に敏感で、多様性・平等性や対話を重んじるとされ、家族に例えられます。
グリーン組織の特徴は三つあります。
- 組織の階層構造は残るものの、意思決定は現場に権限委譲され、リーダーの主な役割は後方支援となる
- 組織の最前線のメンバーが、正しく意思決定できる判断ベースとしての組織文化と、共通の価値観がある
- 幅広いステークホルダー。例えば組織のメンバー、取引先、株主、地域や自然環境などへの価値貢献が重要視される
多くのグリーン組織では、全員参加による対話を求めます。
一方、組織がピラミッド構造のままでは、対話が難しかったり、全ての物事を全員参加の対話と合意により進めるのに、現実的には時間がかかりすぎたりするなどの矛盾を抱えています。
ティール組織(進化型組織)
これまで見てきたレッド・アンバー・オレンジ・グリーンとは異なる組織の形態が、ティール組織です。ティールとは青緑色を意味します。
ティール組織は新しい世界観を持った組織形態と言われます。
組織に所属するメンバーは、自然体で働き組織の存在目的や個人の内発的動機が重視されます。役割としての意思決定者がいても固定的ではなく、意思決定は必要に応じて、その場その場で行われます。
メンバは個人の特性や興味に応じて、それぞれ異なる役割を果たし、全体として調和が保たれるため組織自体が一つの生命体や自然界に例えられます。
ティール組織の特徴は三つあります。
- 常に進化する存在目的
生命体である組織は日々成長し、その存在目的自体も、常に進化していくと考える点 - ホールネス
役割やポジションを用意すると、それらに縛られてしまい、本来その人が持っている価値が発揮しきれないと考える点
そのためメンバーは自分をさらけ出し、自分が持つ価値の全てを発揮し、貢献することが期待されています。 - セルフマネジメント
一握りの権力者が権限を持ってマネジメントを行うのではなく、メンバ全員がお互いの信頼に基づいて仕事を行えるセルフマネジメントの環境があることです。
まだこの組織形態は生まれたばかりのもので、今後社会にどのように受け入れられていくのかは、未知数という面もあります。
ティール組織を実践しているとみなされる企業は、企業理念の実現を模索した結果、ティール組織になっていたという場合がほとんどです。
ティール組織のまとめ
ティール組織の実現の鍵は、トップがティール組織の世界観を持ち、ふさわしい行動をして、ティール組織らしさを保つための維持に努めることです。同様にトップ以外のリーダなどのマネジメント層もこの世界観を理解し、受け入れる必要があります。
これらは必要条件であって、十分条件ではないとも言われています。
ティール組織は、新しく絶えず進化しているが故に、発達途上の組織形態です。資本主義社会において規模化に向いているのか、高収益化が可能なのかなどの疑問も残されています。
組織の形態が、どのように変化してきたかを説明してきましたが、実在する組織は100%オレンジ、100%グリーンというような単純なものではありません。
多くの企業には、一つの組織の中に複数の組織タイプの特徴が、混在していることも理解しておく必要があります。