部下や後輩を育成したい時、つい答えを言ってしまうことありませんか?
でもこれって育成になっていますか?
仕事を進めるにあたってコミュニケーションは必要不可欠なものです。リーダーの立場では、仕事を円滑に進め、部下やチームメンバーを育成していくコミュニケーション力が求められています。教えるという一方的な指導だけではなく、自ら考え、気づいてもらうことが、真の意味での成長につながっていきます。
部下や後輩を育成させる時に大事なポイントは相手に考えさせるような質問をすることです。
そんな質問力を効果的に使うために、質問力について解説していきます。
質問とは
質問することは、相手とコミュニケーションする手段だけではなく、周囲のメンバーを育成するための手段でもあります。
普段皆さんはどんな目的で質問していますか?
通常は、自分が知らないことを相手から引き出す情報収集を目的とした質問が多いかと思います。
でも質問の目的は他にもあります。
自分と相手に答えを持っているかいないかによって、下記のように分類することができます。
答えが『相手にある』 | 答えが『相手にない』 | |
答えが『自分にある』 | 確認・共感 | 指導・教育 |
答えが『自分にない』 | 情報収集 | 共に考える |
- 自分と相手の理解が一致しているかどうかを確かめるための『確認・共感』を目的とした質問
- 相手に考えさせるための『指導・教育』を目的とした質問
- 自分が知らないことを相手に聞くことで「情報収集」を目的とした質問
- 誰も答えを持っていないことに関して考えを深め、論点を整理するための『共に考える』ことを目的とした質問
部下や後輩を持っている立場で相手に質問する場合には、情報収集だけではなく、他の3つの分類も意識して質問を活用することが大切になります。これらの質問を通じて、相手のモチベーションを高められると、なお良いです。
こうした異なる目的の質問を使いわけていくことが、より良いコミュニケーションを促進します。
また、答えを教えるのではなく、質問することによって部下自身に考えさせることで育成にもつながっていきます。
質問をとらえるための4つの視点
質問するといっても、単純に?を付ければよいというわけではありません。
質問するときに押さえておきたいのは次の4つの視点です。
- どうやって聞くのか
→質問する際の適切な言葉遣いやタイミング - 何のために聞くのか
→質問の目的をおさえる - どのような視点で聞くのか
→相手の話をよく聞き、理解したうえで、どんな視点で重ねて質問するのか - 何について聞くのか
→相手の話を聞く際に、その主張・論理構造に不十分な点がないか見落としがないか気づかせるための質問
どうやって聞くのか
まずは、聞きたいという姿勢を明らかにすることで、回答者の心を開き、答えやすくするようにしましょう。
また、何を・なぜ聞いているのかといった質問の意義・意図を明らかにするようにしましょう。
部下には、『教える』のではなく『考えさせる』ことができるというのが質問の効果です。
良い質問をするためには、以下の2点を意識することも大切です。
- いつでもどんな場面でも良い質問はないということを理解すること
・質問する人
・質問をされる人
・周りの聞いている人
など、立場や目的によっても良い質問は変わる - 質問がネガティブな効果を生まないように注意すること
質問の形をとった叱責、非難、責任回避にならないように注意しましょう。
何のために聞くのか
質問をする際に何を聞きたいのか明確になっていますか?また、相手の答えようという気持ちを削ぐような質問になっていませんか?
良い質問は、どういう質問かを考える必要があります。
- わかりやすく質問をする
→何の聞いているのか・・・意図を明確にする
→なぜそれをきくのか・・・意義を理解しやすくする - 考え、答えやすく質問する
→『クローズド・クエッション』と『オープン・クエッション』を使い分ける
→仮定によって発想を広げる - 心を開かせ、共感を作る
→質問=反対・非難ではないことを示す
→聞きたいという姿勢を明らかにする
→ポジティブな方向に思考を向けさせる
『はい』か『いいえ』で答えられる質問。一見するとコミュニケーションがテンポよく進められて良い面もありますが、繰り返されると受け手が窮屈な印象を抱いてしまう悪い面もあります。
回答に自由度がある質問。ただ漠然と『どう思う』などと質問すると回答者が何から回答すればよいかわからず、思考停止をまねいてしまう場合もあります。オープン・クエッションは抽象的にならないように注意します。
どのような視点で聞くのか
仕事の流れに沿った観点を、質問に盛り込むことも大事です。業界や企業、職場環境によって仕事の内容、流れは異なるため、大きな視点でどんな職場、役割にも担う方でも共通にある、ビジネスにおける問題解決の流れに沿って考えていきます。
問題解決においての一般的なステップは下記になります。
- 何が課題・問題なのか
- どこが悪いのか
- なぜそうなったのか
- どうするのか
- どうやってやるのか
質問する人自身が、まず問題解決の流れを意識して質問することが重要です。人は問題解決と聞くと、『じゃあどうすればよいだろう』や『なんでこの問題が起きているのだろう』という原因追及の方向に思考が向かいがちです。
そうした相手の思考や主張が、問題解決のどのステップにあるのかをきちんと捉え、質問をすることによって正しい流れに戻すようにしましょう。
①何が課題・問題なのか | それは本当に問題なのか? |
②どこが悪いのか | 何が問題なのかをより明確にする。 ・問題個所をみつける切り口・視点は何があるか ・どこに違いがあるか? |
③なぜそうなったのか | 本質的な原因を突き詰める |
④どうするのか | 解決策を考える |
⑤どうやってやるのか | ・いつ、だれがどうやってやるか? ・実行の結果はどうやって検証するのか? |
問題解決のステップをチェックリストにして、相手の主張はどこにあるか確認した上で質問をしていきましょう。相手の受け止めと指導をバランスよく混ぜていくことが、部下の育成のためには大切です。
質問相手の思考のくせによって以下に留意して質問していきましょう。
- 指示待ち型
思考が止まっている個所からきちんとステップを踏んで解決策を導き出せるよう、質問を重ねる。 - 決め打ち型
飛ばしたステップがあること、きちんと分析することの重要性を気づかせる質問をしましょう。
何について聞くのか
相手に何を聞くかの質問を考える時は、そもそも相手が何を言わんとしているのか、相手の主張の論理構造を理解することが大切です。それがわかっていないと、どこがどのように欠けているのか、不十分な点がどこなのかが理解できず、的確な質問ができません。
相手の論理構造を理解するためには、論理の三角形構造を使って考えるとわかりやすいです。
- 主張→根拠
→その主張が『なぜそう言えるのか』明確になっているか確認するような質問をする - 根拠→主張
→根拠の説明だけになっていたり、主張が並列になっていないか確認するような質問をする(だから何?どうしたいの?) - 根拠の網羅性
→ほかに考えるべき論点、可能性はないかを確認するような質問をする
質問していく中で、新しい論点が出てきた場合には、主張を補完していく必要が出てきます。
上、下、横の観点から質問を投げかけることで、実務の場面での主張や報告、連絡の内容をより強く、説得力を持たせることができるようになります。
質問力のまとめ
- 質問は、ただ、無意識に聞くのではなく、意図をもって質問を使い分けることが、良いよりコミュケーション・部下の育成につながります。
- 部下も一人一人いろんなタイプがいます。問題解決のステップを頭に浮かべながら、相手がどのステップでの主張をしているのか確認しながら質問してください。
- 質問の具体的な内容を考える上では、論理の三角形を意識してききます。
・主張が不明確な場合はつまり何が言いたいのか?
・根拠が薄い場合には、なぜそう考えるのか?
・重要な論点が不足している場合には他にはないのか?
といった質問パターンを持っておくのがよいです。 - お互いの言葉のやり取りを通じて理解を深め、相手を育成していくためにも適切な言葉を選び、質問のやり方を工夫していきましょう
質問という一つのコミュニケーションツールですが、使い方次第で、部下の育成、仕事の生産性向上にもつながっていきます。この質問という強力な武器を使いこなせるように、日々の会話の中でトレーニングしてみてください。